「ファジアーノのチケットが取れない」という声を、J1昇格後によく耳にするようになりました。実際そのとおりで、しかも人気が出たという話だけでは説明が足りません。数字を並べると、席が取れない理由がはっきりします。
2025年、19試合すべて完売
J1初挑戦となった2025シーズン、ホームゲーム19試合はすべてホームエリアのチケットが完売しました。累計入場者は27万7154人、1試合あたりの平均は1万4587人です。
この平均値の意味を、収容人数と並べると分かります。JFE晴れの国スタジアムの収容は約1万5500人。平均収容率は93〜94%で、J1の20クラブでトップの数字でした。つまり岡山は、ほぼ毎試合を満席に近い状態で開催していたことになります。
18分で消えた中国ダービー
完売のスピードも記録的でした。2025年7月5日のサンフレッチェ広島戦、いわゆる中国ダービーは、販売開始からわずか18分でチケットが売り切れています。当日の入場者は収容上限いっぱいの1万5451人。クラブはスタジアム場外でパブリックビューイングを設けて対応しました。
この試合で分かるのは、需要が供給を明確に超えているということです。売り切れる速さは人気の指標ですが、18分という数字は、それ以上に「席が足りない」ことの表れです。
売り切れ方には順番がある
取りにくさは試合によって差があります。過去の傾向から並べると、こうなります。
| 取りにくさ | 該当するカード | 目安 |
|---|---|---|
| 最難関 | 広島との中国ダービー、伝統的な人気クラブとの初対戦 | 販売開始当日に完売 |
| 難しい | 浦和・鹿島・川崎F・神戸など動員力の大きい相手、土曜夜の好カード | 数日〜1週間程度 |
| やや余裕 | 平日水曜開催、夏場のデーゲーム | 2〜3週間 |
| 読みにくい | 雨予報の週末 | 直前に動く |
2025年は雨天だった清水戦が1万3330人で最少、鹿島戦が1万5325人で最多でした。最少の試合でも収容率86%を超えているため、「空いている日」は存在しないと考えたほうが安全です。2026-27シーズンも、8月15日のホーム開幕・長崎戦で前日までにホームエリアが完売しています。
確実に観るならシーズンパス、だったが
子ども連れなら小学生無料の「夢チケ」があります(子連れ観戦ガイド)。大人がもっとも確実に席を得る手段はシーズンパスです。ただし2025年はそのシーズンパス自体が、クラブ史上初めて完売しました。前年の2倍近い約6500枚が売れています。座席の4割強がシーズンパス保有者で埋まる計算になり、その分だけ単券の販売枚数は減ります。
現実的な打ち手は三つです。オフィシャルファンクラブに入って先行販売の枠を確保すること。年間の販売スケジュールを見て、狙う試合の発売日を最初にカレンダーへ入れること。そして、行けなくなった人の席が戻ってくる公式リセールをこまめに見ることです。
数字が指し示している結論
平均収容率93%超、シーズンパス完売、19試合連続完売、そして18分での売り切れ。これらは別々の現象ではなく、ひとつの事実の異なる表れです。岡山の観戦需要は、いまのスタジアムが受け止められる量を超えています。
クラブが新スタジアムの整備を求め、署名が35万人分を超えたのも同じ理由からです。営業収入の面でも、座席が埋まりきっている以上は入場料収入が頭打ちになります(詳しくは地域と経済の記事で扱いました)。
すでに座席は増え始めている
新スタジアムの議論とは別に、手元でできる対応も動き出しました。2026/27シーズン期間中に、JFE晴れの国スタジアムで観戦スタンドの増設工事が予定されています。工事後は席種の運用にも変更が生じる可能性があるとクラブは案内しています。今季からセブン-イレブンピッチサイドシートが10席増えて80席になったのも、同じ方向の動きです。
ただ、数十席から数百席の上積みで埋まる差ではありません。平均1万4千人台に対して収容が1万5千人台。この数字の窮屈さは、増設で緩和されても解消はしないはずです。
チケットが取れないのは、応援する側にとってはうれしい悲鳴です。ただこの状態が続けば、初めて観に行きたいと思った人がスタジアムに入れないまま離れていきます。木村正明さんが原点に置いた「子どもたちに夢を!」の観点でも、席が足りない状況は放置できません。入場者数のデータは、記録であると同時に、次の一手を求める請求書でもあります。